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個別指導塾|安曇野市穂高|Minori

ブログ

2019.Apr.3〔Wednesday〕

「つくるのではなく、育てる」-その1―

こんにちは、Minori塾長の太田です。

 おかげさまで、開校から10ヶ月近くが経ちました。

 “長く”とは決して申し上げられませんが、一定期間生徒さんを指導させていただいていると、ある葛藤が出てきます(もちろん、生徒さんに対してもっと良い向き合い方はないか、葛藤は毎日のことですが、それとは別の葛藤のことです)。

 その逡巡とは、勉強に対する生徒さんの姿勢をかたちづくっていくことと、点数という結果をめぐるものです。

前者は時間がかかるもので、それぞれの生徒さんによって、その過程もかかる時間も異なります。後者に関しては、いずれにしても点数という結果を出すためには、地道な日々の努力が必要なため、ある一定の時間がかかる場合が多いです(当塾では、有難いことに、比較的短期間で点数を上げてくれている生徒さんが多いです)。小さな塾を営む私共は、生徒さんに学習習慣をつけていただくサポートをさせていただいております。ただ、そのためにご用意した様々なことを、生徒さんに強制することは避けています。短期的に点数を上げるためだけならば、方法はいくらでもあると思いますが、強行策を講じて、勉強に向き合う芽を摘んでしまっては、長期的にみたときに良いことはないと考えるからです。ただそうは言っても、学習塾である以上、点数が上がるという結果が求められることは当たり前のことです。また、日々の努力の結果として点数が上がることで生徒さんが自信をつけてくれ、それが将来にわたっての大きな力となるため、点数が早く上がるように指導することを常に心掛けてもおります。

こうした様々なことが、それぞれ複雑に絡み合っているのが、リアルな状況というものでありましょうか。

 こうした自家撞着ともいえる考えを抱えながら帰宅したときに、火曜日の夜にちょうど放送されているのが、NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』。

 先日は、日本酒造りに革命をもたらしたことで「伝説の杜氏(酒蔵の最高製造責任者)」と言われる、高橋藤一さんという方のことが放送されていました。

伝統的に、日本酒ができるまでには、微生物の力が大きくはたらいているようで、主な登場人物としては、「麹」(コウジカビの胞子)と「酵母」(真菌類に属する単細胞生物)がいるということです。蒸した米に、麹菌(コウジカビ胞子)を振りかけて育てると、「米麹」というものになり、それが米のデンプンブドウ糖に変える働きをしているということです。そして、「麹」の中の米のデンプンから生まれたブドウ糖が「酵母によって分解され、アルコールになるということです。

 そうした微生物が介在し、相手が“生き物”といえる日本酒造りにおいて、高橋藤一さんという方がおっしゃっていたことに、考えるヒントを教えていただいた気がしました。

 「つくるのではなく、育てる」

 麹造りには温度管理が重要ということですが、酒造りをする側が理想とする温度になかなかなってくれないとき、それに手を加えることをせず、生き物がその温度にしてくれるまでじっと「待つ」ことが大切だとおっしゃっていました。また、その方が「伝説の杜氏」と言われる一つの所以は、「醪(もろみ)」と言われる酒の材料(水・麹・米を蒸したもの)を、溶かしたり発酵させたりするために通常行われる「櫂入れ」(醪をかき混ぜる作業)を全く行わず、「酵母」の働きに任せた酒造りを続けていることにあるそうです。

 生徒さんにご入塾いただいたときに、その生徒さんのお悩みやご希望、目標に合わせて、中長期的な学習計画を立てています。その計画をもとに、短期的なスパンでみたときの定期テストの点数を上げるために、“課題の切り分け”をした上で、計画的に指導に臨んでいます。そうした中で、学校の宿題で手一杯で塾の宿題ができずに、塾で学習したことがなかなか定着しないという状況があると、こちらも焦ってしまうという場面も多々あります。

ただ、生徒さんが持っている力を信じて、粘り強く向き合っていると、生徒さんが成長していると実感する瞬間が訪れることがあります。数学の計算問題でいえば、ある単元の計算問題がなかなか定着せずに、1ヵ月間指導を続ける中、入塾当初に解けなくて“課題の切り分け”リストに入れてあった問題を解いていただいたところ、できるようになっているといったことです。特定の計算問題の中にも様々な要素があるため、一つのことに粘り強く取り組むことで、考える力や対応する力が身に付く一つの好例です。

こうした意味では、指導する側がガチガチに固めた計画をただ押し付けたり、点数を伸ばすための最短距離や論理的な手順だけで指導したりする危うさを感じることもあります。

 生徒さんに広い意味での“学力”をつけていただくための“しくみ”や、点数を伸ばすために必要なことをご用意して、皆さまをお迎えしております。ただ、そうした“しくみ”や手順をどのタイミングでどのように実践していただくのかは、生徒さんの“声をきく”(生徒さんの力が醸成されていく瞬間を見逃さずキャッチする)ことで判断することが大切だと感じます。また、指導する側が、そうした判断力を養う努力が大切だと実感します。

 ちなみに、『プロフェッショナル』の最新回は、自分の店を持たず、依頼のあった小さな店に赴いてあんこの炊き方を伝えることから、“放浪の菓子職人”と言われる、小幡寿康さんという菓子職人の方のことが放送されていました。

 小豆の状態はもとより、365日その日の気温や状況によってその炊き方が変わる“あんこ炊き”。その方は、“あんこ炊き”を評して「奥が深いというより、底なし。宇宙のようなもの」という内容のことをおっしゃっていました。ちなみに、愛読書は『論語』で、好きな言葉は「朝に道を聞かば夕べに死すとも可なり」ということです。番組の最後で、「探求をやめたらそこで終わり」とおっしゃっていたのが、印象的でした。

 私が冒頭でお話した“葛藤”に対する答えもきっとないと思います。全てにおいて当てはまるものはない中で、だからこそ、考えることはやめずにいたいと改めて思います。

 個別指導塾を営むものとして、「個別」とはなにかということにも考えが及びます。

 次回は、「つくるのではなく、育てる」―その2―として、ある生徒さんとの会話の中から考えさせていただいたことをお伝えしたいと思います。この春から中学2年生になったある生徒さんの将来の青写真のうちの一つは「青年海外協力隊として、アフリカで活動すること」。私の大学時代の恩師が国連のユネスコの職員でもあったことから、「持続可能な発展」について、その生徒さんとお話しました。キーワードは、やはり、“ある立場からの型をただ当てはめるのではない関わり方としての、一つのあり方”にあると思います。

もし、次回もお読みいただけたとしたら、それまで、失礼いたします。