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個別指導塾|安曇野市穂高|Minori

ブログ

2022.Oct.25〔Tuesday〕

おもしろい“誤答”―その1―

こんにちは、塾長の太田です。

ロートレアモン伯爵の詩の一句である「解剖台の上のミシンと蝙蝠傘との偶然の出会い」の対極をなすのが、「学校や学習塾の机上のテスト」と言えるかもしれません。

現実世界のさまざまな複雑な事象は、その属性を限りなく挙げたところで、解に到達したことには到底なりえませんが、テストに関しては、その属性を列挙していくことは同語反復に帰するものという言い方もできるのではないでしょうか。たとえば、解があるもの。現実をなりたたせている複雑な諸条件を極限まで省く、“無菌空間”のような設定の上に成立しているもの…。

ただ、「学校や学習塾の机上のテスト」に向かわざるをえない場合もあることのように、特定の目的に自分を合わせていくことが必要とされることもあります。以下で紹介させていただくのは、そうしたなかでの話です。

生徒さんを指導させていただいていて、ときどき、おもしろい“誤答”に出会うことがあります。

テストでは、条件が確固たるものとして設定されている(それがその“ゲーム”のなかでのルールとなっている)場合がほとんどであるため、問題作成者のレールから逸脱した解答は、残念ながら、×をつけざるをえないことがほとんどです。

ただ、生徒さんが意識的にそうしたと思われない場合でも、思いがけない視点が提示された!と感じさせてくれる解答があります。

このシリーズでは、そうした“誤答”を紹介していきたいと思います(そうした“誤答”に出会ったときに、随時、紹介させていただきます)。

今回は、英文法問題での“誤答”について。

先日、ある生徒さんが英語の文法問題を解いていたとき(英語が苦手ではない生徒さんです)、その生徒さんは、“一般動詞”にer(比較級で、特定の“形容詞”・“副詞”の語尾につけるもの)をつけていました。

そのとき、マゾヒストの私は、ハッとさせられました。

それぞれの“品詞”を擬人化したとき、そのとき、“一般動詞”にしてみれば、“他人のパンツ”を履かされているといった状況(もちろん、問題の設定がちがったとき、特定の”一般動詞”にとってみれば、語尾にerの”パンツ”を履くことで”名詞”に変身する場合は考えられるものの)。

英語は、語順のことばとも言えると思いますし、さらに、きまった場所に特定の品詞を置いていくイメージが大切なため、“品詞”を擬人化してとらえることは、突飛なことでもないように思います。

また、ここで詳細を述べることはいたしませんが、擬人化は、学習の様々な局面において、有効な方法であるとも考えられます。

擬人化ということで、想起されるのが、能町みね子氏の『雑誌の品格』。「まえがき」で、能町みね子氏は、次のようにおっしゃっています。

「この企画では、毎月ある雑誌を(ある程度は過去の分も)読んで、そこから読者像を独断と偏見で想像しました。記事内では、その雑誌の人格を「雑誌名さん」と呼び、(例:「セブンティーンさん」等。毎回文章中に唐突に出てきます)年齢、容姿、家族構成やら趣味まで勝手に考えて、一人のあるいは複数の人格として作りあげています。」

私は『装苑』というファッション雑誌が好きで、多数購入していましたが、そのなかに当該コラムがありました(単行本化もされており、私も愛読しております)。

先日、ふとテレビをつけたときに、テレビ東京で「能町みね子のニッポン駅歩き」という番組が放映されており、そうした記憶がよみがえりました。

当初の話にもどると、“誤答”は大切で、それが大切であることの理由の一つは、自分がまちがえたところを意識化して分析することで、その後、同じまちがいをしないためにはどうすればよいのか、想像力をはたらかせながら、対策を練る力をつける一助となる可能性をそなえていること。

ただ、それだけでなく、一つの”誤答”が、他者が自分で意識していなかった面に思いがけず気づかせてくれるきっかけを与えてくれるといった意味で、特定の場をつくりだす創造性を有することが、“誤答”が大切な理由の他の側面であると言えるかもしれません。

「学習塾の机上のテスト」で、思いがけず、新たな視点や忘れかけていたことに対する気づきを与えてくれる生徒さんに、大切なことを教えていただいています。